人工光合成のエネルギー変換効率


スポーンサードリンク

人工光合成のエネルギー変換効率

自然界の光合成

自然界の光合成 自然界の「光合成」のエネルギー変換効率を考える場合、定義によってエネルギー変換効率が大きく変わることを知らなければなりません。
植物の「光合成」の場合、まず、エネルギーは電子伝達に使われ「ATP」という物質が合成されます。そして、「ATP」のエネルギーによって二酸化炭素から糖が作られます。
従って、各過程で相当のエネルギーロスがありますし、植物の生長自体を光合成によって得たエネルギーでまかなっていることも考えなくてはなりません。
従って、植物のそれらのエネルギーを全て含めると「光合成」は30%程度のエネルギー変換効率になると言われていますが、有機物として得られる最終的な植物の「光合成」のエネルギー変換効率は一般的に太陽光エネルギーの1%前後と言われています。
つまり、太陽光から100のエネルギーを得た植物が「光合成」によって有機物として残せるエネルギーは1という訳です。1%のエネルギー変換効率と聞くと非常に効率が悪く感じられますが、この1%のエネルギー変換効率を「人工光合成」で達成するのは至難の技なのです。

人工光合成の中身は千差万別

人工光合成の中身は千差万別 それでは、現状での「人工光合成」のエネルギー変換効率は、一体どの程度なのでしょうか。それを考える前に、「人工光合成」の中身を考えなければなりません。現状の「人工光合成」の中身は千差万別だからです。
例えば、光エネルギー変換という意味では、太陽電池も「人工光合成」に含められます。
また、人工的に水の分解と酸素の発生とエネルギーの取り出しを行なった「人工光合成」の例もあります。更に、常温常圧の太陽光を使って、ギ酸を生成した「人工光合成」の例も報告されています。
つまり、水の分解の部分は半導体の触媒を使うなどの方法や、植物の「光合成」に光化学系の2種類の触媒が働いているのを真似て光エネルギーによる直列の2段階の電子伝達を行なうことまで成功しています。
しかし、効率という面から見ると「人工光合成」は実用化には、まだまだ、ほど遠い状況です。
現在、最もエネルギー変換効率が高い「人工光合成」の例でも、エネルギー変換効率は0.1%程度だからです。
しかも、0.1%という数字は、「人工光合成」の実験を始めてから終わるまでのエネルギー変換効率に過ぎません。
仮に、「人工光合成」のエネルギー変換効率が植物の「光合成」のエネルギー変換効率に並んだとしても、それだけで実用化できる訳ではありません。
例えば、「人工光合成」の装置の製作エネルギーや、メンテナンスエネルギーなどの全てのエネルギーを含めて考えなければ意味がありません。つまり、「人工光合成」のそれらを含めた全てのエネルギー変換効率が植物の「光合成」のエネルギー変換効率を上回らない限り、「人工光合成」は実用化には至らないのです。
それができない限り単に効率的に植物を植えるなどして、自然界の「光合成」を利用する方が地球のためになるとも言えるからです。