「光合成」は自然界の水と二酸化炭素を使って太陽光などの光エネルギーから化学エネルギーとしての炭水化物と酸素を合成するものですが、これを人工的に行うことを目指しているのが「人工光合成」です。
「人工光合成」研究には様々な切り口があります。例えば、太陽光エネルギーによって水を完全分解し水素を得る研究が行われています。また、同様に水と二酸化炭素からエタノールなどを取り出す研究も行われています。更に、広義の「人工光合成」には、太陽電池を含める考え方が主流になっています。
言うまでもありませんが、人類を含む全ての動物は酸素が無ければ生きていけません。
また、人類を含む全ての動物の食料も、元を辿れば植物が「光合成」によって生成した有機物に由来しています。
更に、人類が現在使用している化石燃料である石炭・石油・天然ガスも、元を辿れば植物が「光合成」によって生成した有機物に由来しています。
特に、人類は産業革命以降は猛烈な勢いで化石燃料を消費し、近年は化石燃料の枯渇を心配するに至っています。更に、二酸化炭素が増加し地球温暖化が危惧され、爆発的な人口増加で将来の食料問題も心配されています。
つまり、現在の様に化石燃料や植物や酸素を一方通行的に使うばかりで再生産できないシステムに対して、限界を感じているのは科学者だけではないのです。
この様な時代に無尽蔵の太陽光から様々なエネルギーを生み出す「人工光合成」は、それらの問題を一気に解決する夢のサイクルを人類だけではなく地球にもたらすものです。
そして、現在の「人工光合成」の研究は、あと10年〜20年程度のスパンで実用化できるところまで来ているのです。
現在、「人工光合成」の研究は日本とアメリカをトップランナーに中国や韓国も含めて凌ぎを削っていますが、「人工光合成」の実用化を山の頂点に例えると5合目に到達したレベルだと言われています。
例えば、既に、自然光での「人工光合成」の実験で単純な有機化合物のギ酸を作ることに成功していますが、まだ、植物の「光合成」のエネルギー変換効率である1%には遠く及びません。
従って、最終的には「人工光合成」のエネルギー変換効率が10%を上回ることが、実用化の1つのメドと言えそうです。自然界の植物の「光合成」を上回るエネルギー効率に達しなければ、多くの時間とコストを掛けて「人工光合成」研究を続ける意味が無いからです。
日本のトップの研究者達は、そのレベルに2030年までに到達することを当面の目標に日夜研究を続けています。