人工光合成研究の課題


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人工光合成研究の課題

水の完全分解

水の完全分解 「人工光合成」に於いて「水の完全分解」は最も重要で最も基本となる反応です。
「水の完全分解」の定義は、水素と酸素が2対1の化学量論比で定常的に発生する反応を意味します。つまり、水素だけが発生する反応や酸素だけが発生する反応は、「水の完全分解」とは言えません。
また、長時間反応後の発生ガスの総量が触媒量を十分に上回っているか、触媒は変化していないか等を十分に確かめる必要があります。
更に、メタノール水溶液からの水素発生や硝酸銀水溶液からの酸素発生は水の分解反応と言えますが、「水の完全分解」とは言えません。
つまり、「人工光合成」は太陽光エネルギーによって「水の完全分解」が行われ、水素と酸素が2対1の化学量論比で定常的に発生する反応を意味することになります。
「人工光合成」の実用化の観点から見ると特殊な水溶液や触媒を用いた実験室の中だけの反応は、もはや大きな意味は無いのです。

人工光合成の触媒

人工光合成の触媒 植物の「光合成」では太陽光エネルギーの下でクロロフィルを用いた2種類の光吸収物質が多くの電子リレーを行い、「水の完全分解」が行われ酸素を発生し二酸化炭素を糖に還元しています。
つまり、植物のクロロフィルに触媒の働きをする秘密があり、クロロフィルの様な金属錯体を究明する研究が長らく「人工光合成」研究の中心でした。
しかし、水から酸素を引き抜く反応は4つの電子を同時に用いる反応で制御が難しく、更に、金属錯体が酸素に対して不安定なため、金属錯体での「水の完全分解」は実現できませんでした。
そこで、1980年以降は半導体粉末を「光触媒」として利用する研究が主流となりました。
「光触媒」とは、光の吸収により励起され酸化反応と還元反応を引き起こす触媒物質を意味します。
例えば、「酸化チタン」や「チタン酸ストロンチウム」などの粉末を、「光触媒」として利用する研究が行われました。そして、紫外線照射下に於いては、「水の完全分解」に成功しています。しかし、太陽光に紫外線は僅かしか含まれておらず、効率的なエネルギー変換や「人工光合成」の実用化のためには可視光を利用することが不可欠となっています。