人工光合成研究の歴史


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人工光合成研究の歴史

基礎研究段階

基礎研究段階 「人工光合成」の研究を進めるためには、太古の時代から自然界で行われている「光合成」のメカニズムを研究することが不可欠です。自然界の「光合成」のメカニズムを解明することで、「人工光合成」に一歩づつ近づくことができるからです。
しかし、18世紀の研究レベルでは「人工光合成」は夢のまた夢で、自然界の「光合成」のメカニズムを解明することで精一杯でした。
その様な18世紀の世界の「光合成」研究の先駆けとなったのは1771年のイギリスの化学者「ジョセフ・ブリーストリー」の研究で、彼は「植物はきれいな空気を出して空気を浄化している」ということを実験で証明しました。
また、太陽電池の研究は1839年にフランスの物理学者「アレクサンドル・エドモン・ベクレル」が「光起電力効果」を発見したことから始まり、1884年にアメリカの科学者「チャールズ・フリッツ」が太陽電池の製作に成功したことは既に述べました。
そして、1950年に「カルヴィンとベンソン」が植物の「光合成」における二酸化炭素固定反応の秘密を解き明かし、1956年にアメリカの化学者「ルドルフ・マーカス」が「マーカス理論」を発表し「光合成」の研究を飛躍的に進ませる理論的基盤を構築しました。

本格的な人工光合成研究

本格的な人工光合成研究 近年の本格的な「人工光合成」の研究は、20世紀後半に日本人の科学者によって相次いで成し遂げられています。
まず、1972年に英科学誌「ネイチャー」に論文が発表された「本多健一東京大学名誉教授と東京大学大学院生・藤嶋昭研究員」による「ホンダ・フジシマ効果」は、酸化チタンを使って初めて人工的な「光触媒」を行ったという意味で大きな価値がある実績を残しました。
そして、2011年に「大阪市立大学」の「神谷信夫教授」が発表した論文が、世界的な「人工光合成」の研究競争に火を付けました。植物が「光合成」で水を分解する際に、触媒として働く「マンガンクラスター」という物質の原子構造を初めて突き止めたからです。
つまり、「マンガンクラスター」という物質に似た触媒を開発すれば、効率的な「人工光合成」が実現できる筈だからです。
また、それまでは室内で紫外線などの疑似的な太陽光を使った実験が主流でしたが、2012年12月に「パナソニック」は屋外での自然な太陽光を使った実験に成功し単純な有機化合物のギ酸を作り出すことに成功しました。
更に、2013年5月にはトヨタ自動車グループの「豊田中央研究所」も、方法や条件が異なる屋外実験でギ酸の生成に成功し実用化へ大きな一歩を踏み出しました。