2010年、アメリカのオバマ大統領は演説で「我々は様々な分野の中で特にクリーンエネルギーに投資します。その中で太陽光と水で自動車燃料を作る技術を開発しているのです」と述べました。
オバマ大統領の演説にある様にアメリカ政府は、「人工光合成」研究に5年間で100億円以上の巨費を投じ国家プロジェクトとしてカリフォルニア州に「人工光合成ジョイントセンター」を作りました。
現在、「人工光合成ジョイントセンター」で研究を行っているのは130人を超す研究者たちで、触媒を専門とする化学者・物理学者・装置を作る機械工学者など全米から第一線の研究スタッフを集めています。
最初に大きな目標を掲げ集中的に多くの予算と人材を投入し、大規模な拠点を作り短期間で成果を出すというアメリカ得意のプロジェクトです。
「人工光合成ジョイントセンター」のサイエンスディレクターであるネイサン・ルイスさんは次の様に語っています。「基礎研究から技術の開発まで研究開発の全てを一ヶ所で行っているのがジョイントセンターの最大の強みです。我々は今後3年で植物の10倍以上のエネルギー変換効率を目指しています」と鼻息は非常に荒いのです。
「米ローレンス・バークレー国立研究所」が2013年5月に、「人工光合成」システムを集積化した「ナノデバイス」を開発しました。
このシステムは植物の葉緑体に似た構造を持つ樹木状の「半導体ナノワイヤ」に太陽光を吸収させ、太陽光エネルギーで水を分解して酸素と水素を生成するというシステムです。
このシステムの特長は植物の葉緑体には酸化反応である「光化学系U」と還元反応である「光化学系 I」 という2種類の「光合成反応中心」が存在していますので、これらが他のタンパク質複合体と組み合わさり太陽光による水の分解と化学エネルギーへの変換経路を形成しているということです。
今回の「人工光合成」デバイスによる太陽光エネルギーから化学エネルギーへの変換効率は、現在0.12%となっています。これは自然の「光合成」と比べると低いため、今後、より高性能な光陽極を開発することで「人工光合成」システムのエネルギー変換効率を1%台に引き上げることを目指しています。